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東京・お台場の国際研究交流大学村。内外の研究者や留学生向けに昨年4月に建設されたマンションに、スエーデンの家電大手、エレクトロラックスの洗濯機470台が一括納入された。国内ではなじみが薄いドラム式タイプだが、施主は世界最大手としての実績や品質を評価、採用を決めた。エレクトロラックスは日本市場で攻勢をかけており、投入している製品は冷媒にフロンを使わない冷蔵庫や、ワインクーラーなど高級品が中心。これらは日本製品と比べて2倍近い値段であり、その他の製品も5割以上割高だが、高所得者層を狙った販売戦略が奏功し、年率2割のペースで成長しているといわれている。同社の強みは高い収益力にあり、売上高営業利益率(連結)は1990年代後半から上昇傾向にあり、2000年12月期は6.5%に達し、日本の電機大手の家電部門が1%から3%であるのを比べると差は大きい。株主資本利益率(ROE)も18.5%と高い。
高収益の背景には、得意分野に経営資源を集中する戦略と量産性の追及があるようだ。洗濯機に例を見れば、モーターなどモジュール(複合)化した部品の組み合わせを変えることで製品を作り分けているほか、製品のモデルチェンジも3年から4年に一度と少なく、息の長いモノづくりが開発負担の軽減につながっている。日本メーカーは多様な製品を手掛ける「総合家電」を強みとして掲げるが、年1回以上モデルチェンジをしたり、細かな機能を次々と追加するなどして、開発負担が膨らんでいる。シェアの低い製品を抱え続けていることも、経営効率の低下につながっているという。
家電メーカーにとって大きな課題の製品のリサイクルでも、欧州勢は日本よりも1歩も2歩も先んじている。イタリアの家電メーカー・デロンギの日本法人は1996年に商品の再資源化業務を始めた。日本では昨年4月に施行した家電リサイクル法を先取りしていたのである。回収・分別ルートは独自で構築。自社サービスセンターで商品を回収後、分別の専門業者に渡し再資源化している。昨年から新製品を対象に国内メーカーが「市場低迷につながる」として敬遠するリサイクル料金の前払い方式の採用にも踏み切った。欧州で実践済みの環境事業モデルを日本に根付かせることでブランド力の向上につなげることに成功したのである。
この「欧州モデル」では、得意分野への経営資源集中、高価格販売、量産性への仕組みづくり、環境対策、などによる高収益、ブランド戦略の実践が見られ、EFQMのビジネスエクセレンスモデルで言えば、方針・戦略(#2)、プロセスマネジメント(#5)、社会への責任(#8)、などの事例として注目すべきである。総合家電の旗を降ろせず、経営資源を分散せざるを得ない日本企業と言われる中で、収益性に優れる『欧州モデル』にこのままでは勝てないことに気づくべき時期に来ているのではないか。
(参考:日経産業新聞2002年1月4日)
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