米同時テロを機に危機管理の仕組みを検討しようと、コンサルティング会社やシンクタンクに助言を仰ぐ企業が急増しているという。
だが、あるリスク管理の専門家は、”商売繁盛”にもかかわらず複雑な表情だ。
「どの企業も”ほかの会社はどんなテロ対策をとっているか”と聞いてくる。
こう横並び意識が強くては結局、通り一遍のリスク管理に終わってしまう。」
というのがその理由だ。
消費財メーカーなら工場がテロの攻撃を受けた場合、従業員の安全確保だけでなく、製品の完全性や供給能力について消費者、取引先へ迅速な説明が欠かせない。
流通網や顧客層は企業によって異なるので、危機への対応は自分の頭で考えるしかないのである。
「緊急時に起こす行動の優先順位は、企業によって違うはず」
と指摘する。
そこには、企業によって異なるステークホルダーとの関係が考慮されなくてはならないはずである。
危機管理の横並び意識もそうだが、経営品質向上活動でも同じようなことが言える。
他の会社が経営品質向上活動をやって成功しているからと言って、それをそのまま持ってきても同じように成功するとは限らないのである。
また、その程度のことをやれば良いという、通り一遍の活動ではやらないほうが良い。
現場に不要な負担をかけるだけの話しである。
なぜならば、その企業の競争力を生み出すエクセレンスモデルの重要な成功要因は、その企業や意識特有の戦略や仕組み、人材を含めた経営資源から生み出されるのであり、各社各様であり、ひとつとして同じものではない。
卑近な例で恐縮だが「天麩羅蕎麦」ひとつをとってみても、客商売にしようと思えば、天麩羅のうまさで客を唸らせるのか、しこしこ麺で特徴を出すのか、はたまたソバツユで勝負するのか、競争力を生み出す戦略を明確にしてこそエクセレンスを追求できるのであって、その実践が事業成果などに反映することになる。
「知識という石を、こころの炎で溶かせ」と、河井継之助が言っているが、「経営資源という石を、経営戦略という炎で競争力に昇華させよ」といったところかもしれない。
再び危機管理の話しに戻る。
第一に消費者、次いで従業員、地域社会、株主。
米ジョンソン・アンド・ジョンソンが80年代の鎮痛剤への毒物混入に際し、製品回収という素早い対応を取れたのは、経営の優先順位を明確にする哲学があったからだ。
自分の会社は何をし、何によって成り立っているか。
企業経営の出発点となるテーマを、米同時テロは経営者に問い直しているようだ。
ちなみに、EFQMの危機管理に関するクライテリアは、#2cの方針・戦略策定のPDCAにある。
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